未来の林業!?注目される「スマート林業」とは?
スマート林業とは、デジタル管理による林業、安全で高効率な自動化機械による林業のことです。ドローンやリモートセンシングなどのIOT(モノのインターネット)の活用を促進させることで、作業現場の把握が容易となり、安全性の向上とともに今後の担い手不足解消への期待が高まっています。

※IOTとは:モノのインターネットと言われ、ICTのようにITによって繋がる技術の中でも、特にモノとモノが繋がる技術のことをいう
※リモートセンシングとは:対象物を遠くから測定できる技術のこと。人工衛星やドローンなどを利用して広域を計測可能
スマート林業実現への各段階
アナログからデジタルへ
スマート林業を実現するには下記の3ステップが必要です。3ステップと言ってしまうと簡単ですが、経営する側・林業従事者・行政・各技術メーカーの相互間の協力があることが大切です。
- 1.紙媒体をデータ化
紙伝票や紙図面、森林情報をデジタル化して連携する
→現場で手書きして入力、の作業が削減される - 2.デジタル活用人材の育成
機材やシステムの操作方法から解析方法などの担当する人材の育成
→新たなICT技術などの林業現場への負担を軽減 - 3.デジタル技術のフル活用
データを活用した森林管理、木材需給マッチング
→山土場での検知結果の分析が容易になる
スマート林業の具体例
スマホ活用

位置情報アプリなどで現在位置や経路のログを取得したり、作業記録や報告書を現地で即記録・即共有できたりと、一元管理が容易になります。また専用アプリなどで作業自体を簡略化できるものもあり、導入のしやすさも魅力です。
例:丸太検知アプリなど
ドローン活用
ドローンで森林を撮影することによって、木の分布や成長状況を可視化したり、同じ場所を定期的に撮影し、成長や間伐後の変化を比較することもできます。災害時には危険地域に人が入らずに調査が可能となり、作業道や搬出ルートを効率的に計画できるという利点は大きく、森林管理においてドローンの活用は年々広がっています。
オルソ補正
空中写真やドローン画像は、撮影時の角度や地形の凹凸によって傾いて写ったり、距離が正確でなかったりします。オルソ補正をすることによって、地図と同じように正確な距離と面積を測れ、座標情報とも一致する画像となります(オルソ画像)。
リモートセンシング
リモートセンシングとは対象物を遠隔で計測する技術のことです。リモートセンシングには前述したドローン、人工衛星、航空機など上空から計測するもの以外にも、車両や三脚などから計測されるものも含まれます。
GISソフト
GISとは、地図上に情報を重ねて分析や管理をするツールのことで、ドローンで撮影したオルソ画像やスマホの位置情報アプリから出力したデータ、リモートセンシングで取得した画像などを活用するために必要なソフトです。各情報を一元管理、見える可されるため情報共有がしやすくなり、より正確な意思決定が可能となります。
需給マッチングシステム
木材などの林産物の「供給側(山側)」と「需要側(市場・製材業者・建設業者など)」をデジタルでつなぎ、効率よくマッチングするためのシステムです。
例:MORINK(木材SCM支援システム)など

スマート林業のメリットと課題
スマート林業のメリット
・生産性の向上
・安全性の向上
・精密な森林管理
・持続可能性の向上
機械化やICT重機で自動化することで、伐採や集材においての人手作業が減ることにより生産性が向上し、必然的に林業従事者の安全も確保しやすくなります。価格的にも導入しやすいスマホやドローンを活用している事業体は増え、森林資源の調査時間を短縮でき、作業を効率化・省力化。森林データの蓄積と一元管理により、森林資源量と森林の成長や変化の推移を把握できるため、適切な間伐や植林が可能となります。需給マッチングシステムなどを利用すれば流通を効率化、無駄なコストや在庫を削減でき、計画的な伐採と供給により森林の健全な更新サイクルを促進できます。
また重労働のイメージが大きい「林業」、作業を効率化することで必要人員を削減できるうえ、技術職という枠組みが増えることで、若手や女性が参入しやすくなるのでは、、、という期待値も含めてメリットと言えるでしょう。
スマート林業における課題
・初期投資コスト
・人材育成のコスト
・導入後の運用管理
デジタル化には各費用が伴います。ドローン・GNSS(GPS)重機など、小規模林業経営体には大きな負担になることが懸念されています。また購入後は運用していくことが不可欠です。そのためのソフトウェアや、それらを運用できる人材が必須です。また林業従事者も紙でなくデータで提出することに慣れてもらわなくてはなりませんし、そのための研修やサポート体制が必要となります。
スマート林業は、「コスト・人材・地域インフラ」などの現場課題をクリアしないと、導入が「絵に描いた餅」になってしまうリスクもあります。導入前の準備・支援・人材育成がとても大切です。
※各自治体で補助金等を利用できる場合があります
スマート林業がもたらす未来

日本の森林の多くは急傾斜地にあり、林業機械が入りにくく、重機1台の稼働率が低いためコスト高がネックとなっています。スマート林業技術は、林業事業体や地域における今の課題を解決するための手段です。林業の現場ひとつひとつに必要な技術を選定して導入していくこと、人材育成、行政、研究機関、各木材流通各社、そして地域との連携がその効果に大きく関わってくると予想されます。
最終的に目指すのは地域全体での木材の安定供給の実現です。海外では巨大垂直統合林産企業(伐採~製材~住宅、パルプ)による森林経営、林地投資会社による長期安定、再生産可能な投資先としての森林経営などが行われています。日本においても製材工場が山林を所有し経営する例も増えてきています。これに対し、需給マッチングシステム(林業事業体、原木市場、工場など需要先との合意形成あり)で地域の強みを活かせるかどうか、が勝負の別れ道です。
スマート林業技術が、森林と人、経済と環境をつなぎ直し、林業と言う産業を「未来を支える産業」へ変えてくれるのかどうか。それはやはり「人」次第です。
(参考:林野庁「スマート林業実践マニュアル」より)
(参考:林野庁「スマート林業オンライン講座」)
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