林業は、自然環境とわたしたち人間社会の関係を維持し、持続可能な形で森林資源を利用するための重要な産業です。しかし、現代の日本の林業は多くの課題に直面しており、その未来はどうなるのかが注目されています。

ここでは、現在の日本の林業の状況を踏まえて林業の未来について考察し、現状の課題とそれに対する解決策、そして持続可能な社会に向けた新しい林業の可能性について掘り下げていきます。


これからの日本と林業

林業の収益性向上への課題

日本の木材価格は海外に比べて割高であることが、日本の林業の収益性を下げる要因となっています。そして、収益性を向上できなければ担い手確保もままならず、悪循環の状態です。

そもそも日本の木材の販売単価は需要に左右されるため、単価の向上よりもコスト削減が重要といわれています。こちらの資料は、丸太のコストをオーストリア(日本と比較的類似した地形や森林所有規模等の条件を有する)と比較したものです。いずれのコストも日本が割高となり実際の木材の価格を押し下げる原因となっています。現在割高のコストを削減するためには、生産性の高い作業システムを構築することが重要となってきます。

(資料:林野庁「令和2年度森林・林業白書」より)


生産性向上のためのアプローチ

まず簡単に比較しますと、日本の地形に近いオーストリアの林業では、労働者1人が1日で生産する丸太の量は30~60㎥(車両系作業システム2008年調査データ)という結果に対し、日本では間伐で4㎥、主伐でも7㎥と、大きく差があるのがわかります(2018年データ)。オーストリアでは高い路網密度と大型林業機械を最大限に活用した作業システムでこのような高い生産性を有しており、日本も効率化を目標に経営管理をしていくことが求められています。

  • 施業の集約化:現在の日本の森林の所有構造は、小規模で分散しています。これらを効率的に施業するためには隣接する複数の森林を取りまとめ、一体的に施業を実施する「施業の集約化」をする必要があります。
  • 森林整備地域活動:上記の施業集約化のために必要な事前準備です。具体的には、森林境界の明確化、森林所有者の探索、森林経営計画の作成などがあります。
  • 高性能林業機械の導入:これらを導入することで、少人数で作業システムを構築でき生産性の向上が可能です。日本でも「ハーベスタ」「プロセッサ」「フォワーダ」などを中心に保有台数は増加しています。

・ハーベスタ…主に「伐倒」「枝払い」「玉切り」「集積」の作業工程を一度に行うことができる
・プロセッサ…すでに伐採された木材の「枝払い」「玉切り」の行程を行う
・フォワーダ…木材の積み込みも行える集材作業車のこと

テクノロジーの導入

収益性の向上には、テクノロジーの活用も不可欠です。

  • ドローンやAIによる森林管理:ドローンやAI技術を活用することで、森林の健康状態をリモートで監視したり、伐採や植林の最適な場所を特定したりすることが可能になります。また、GPS技術を使った林業機械の自動化も進展しています。
  • スマート林業:IoT(モノのインターネット)を利用して、林業の作業をリアルタイムで管理する「スマート林業」が注目されています。これにより、作業の効率化や労働力不足の解消が期待されています。

生産性向上への課題

林業の担い手不足、収益性向上に今後必要とされる「施業の集約化」「高性能林業機械」「テクノロジー」ですが、それらを最大限活かすためには多くの課題があります。

林業機械の投資額は大きいため、安易に取りいれることは逆に収益性を下げる結果となってしまうからです。林業機械を効率的に稼働させるためには、見合った仕事量、つまり施業地の確保が必要となり、小規模の林業経営体では合理性に欠く選択となります。また施業の集約化によって、効率的に稼働することも重要です。

但し、この「施業の集約化」も、森林所有者の高齢化、相続などにより所有者を調べるのが困難であったり境界を明確化することが難しいケースも多く、それらの解消が今後の課題となります。


環境保護と林業のバランス

林業は公共的な側面もある仕事です。持続可能な林業を推進するには、経済的な利益と環境保護とのバランスを取ることが必要です。未来の林業においては、以下のような取り組みが鍵となります。

  • カーボンオフセットの推進:森林は、二酸化炭素を吸収し、地球温暖化を緩和する重要な役割を果たします。これを活用し、企業や個人が自らの二酸化炭素排出量を森林の保全や植樹活動を通じて相殺する「カーボンオフセット」プログラムが普及しています。
  • エコツーリズムの推進:観光業と林業を組み合わせたエコツーリズムは、地域経済を支えつつ、環境保護活動を広める重要な手段となります。これにより、地域の森林資源を維持しながら観光収入を得ることが可能となり、持続可能な発展が期待されます。

グローバルな視点で見る林業の未来

林業の未来は、日本だけでなく、世界中の森林保護と持続可能な開発が係わってきます。国際的な気候変動対策としての森林保護活動や、森林管理のベストプラクティスの共有が進められています。例えば、国際的な協定である「REDD+(減少する森林の保護)」は、途上国の森林保護と温室効果ガスの排出削減を支援する取り組みとして注目されています。

林業の未来を切り開くために必要なアクション

林業に従事する若い世代はわずかながらも近年増加傾向にあります。女性の林業現場への進出もだんだんめずらしいことではなくなってきました。これらの可能性を潰さずに、未来の林業を持続可能な形で成長させるためには、個々人、企業、政府が協力して以下のアクションを推進していく必要があります。

  • 教育と人材育成:若者を林業に引き込み、次世代の林業従事者を育てるための教育プログラムや、技術の継承が重要です。具体的には市民講座としての森林大学や、社会人向けの短期日程の林業研修会、また全国にある林業大学校などでは即戦力として専門的な分野を学ぶことができます。
  • 政策の強化と補助金の提供:政府は、林業従事者に対する支援を強化し、持続可能な森林管理を促進する政策を打ち出しています。林業者や木材加工業者等への税制支援や、森林整備活動や森林環境保全や復旧作業などの事業への補助金、新規林業者を育成するための「緑の雇用」、就業者の裾野を広げるための「緑の青年就業準備給付金」などの支援を行っています。

結論:持続可能な未来の林業

林業の未来は、多くの課題と可能性を秘めています。人口減少や高齢化、環境問題といった厳しい現実に直面する中で、テクノロジーの導入や新しい経済モデルの創出が鍵となります。
私たちは、森林を守り、持続可能な形で利用するために、個々人が行動を起こす必要があります。
林業体験を通じて、自然と触れ合い、持続可能な未来を考える機会を得ることが、その一歩となるでしょう。

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