畜産業は、農業が困難な山間地・寒冷地等条件が不利な地域を放牧などに有効活用できることから関連産業への裾野が広く、地域の雇用創出など地域経済において重要な役割を担っています。

特に、農村地域では畜産を通じた「地域ブランド」「地産地消」が地域経済の発展に大きく貢献しており、観光促進や地元の活性化にもつながっています。


地域経済と畜産業の関係

現在畜産業では、牛肉・乳製品の輸出促進のほか、地産地消、食育などを推進中。
地域産の肉や乳製品、卵などは「ブランド品」として地元外からも注目され、観光客の誘致につながっています。

「和牛」ブランド

「和牛」というブランドも世界でとても有名になりました。しかし海外では「和牛」という名前が、日本産でない牛肉に対して使われることがあります。これは日本の和牛ブランドに対する信頼を損なう可能性があり、輸出促進のためには、名前だけひとり歩きしないよう日本の和牛を世界中に正しく発信する必要があります。そのため、「和牛統一マーク」が2007年に制定されました。
「和牛」と呼ばれる品種は以下の通りです。知っていましたか?

1.黒毛和種(くろげわしゅ)※全国
2.褐毛和種(あかげわしゅ)※熊本県・高知県
3.日本短角種(にほんたんかくしゅ)※岩手県・青森県・北海道
4.無角和種(むかくわしゅ)※山口県
5.上記4品種間の交配による交雑種

日本国内で出生し飼養された牛であり、そのことを「牛トレーサビリティ制度」で確認できて、はじめて和牛と名乗れます。※牛トレーサビリティ制度…牛の個体識別番号により、品種やその牛がいつどこで生まれ育てられ、食肉となったかを確認できるようにする制度

地域ブランド

日本では有名な地域ブランド牛がたくさんあります。「神戸牛」「松坂牛」「宮崎牛」「飛騨牛」・・・、まだまだありますが、これらはすべて黒毛和種です。実は、日本で飼養されている和牛の9割はこの黒毛和種となります。一般的に呼ばれている「黒毛和牛」は黒毛和種のことです。

   但馬牛

   土佐あか牛

   いわて短角牛

   山口県無角和牛


畜産業の多面的機能

畜産業には地域経済に密接な多面的機能があります。地域ブランドが発展すればするほど、畜産物の6次産業化、加工品などで観光誘致や交流人口の増加など、地域の活性化を促すことが可能です。

黒毛和種が多いブランド牛でも、おいしさを見える化することでわかりやすくブランド化したり、道の駅グルメとしての発信やレストランと協力して新メニューを開発するなど、より特徴を出せるよう工夫しています。
また黒毛和種以外のブランド牛では、その希少性を特徴として、その特定の地域でのブランド化を展開しています。

「土佐あかうし餃子」

例えば、手前みそではありますが、弊社スタッフが和牛“土佐あか牛”を100%使用した餃子を開発、2023年から販売しています。
このほど、もともと販売していた生姜餃子が【高知家のうまいもの大賞2025】で高知家賞を受賞しました!
餃子づくりをはじめたきっかけはスタッフブログにて・・・
移住から5年、農業そして6次産業化へ


(補足)国産牛との違い

和牛と国産牛は、文字だけみると同じように感じますが、実は違います。スーパーなどでよく見かける国産牛、これは日本でいちばん長く飼養されていれば、海外で生まれ育っていても「国産牛」と記載OKです。和牛のように品種の規定があるわけではありません。
また日本で流通しているそのほとんどは、オスの「ホルスタイン種」です。
ちなみにたまに見かける「黒牛」「黒毛牛」という記載も、「和」の文字が入っていなければ和牛ではありませんので、知っておきましょう。

以前書いた記事に、肉牛飼育頭数ランキングを掲載していますので、気になる方はご覧ください。
移住で新たな生活を手にいれる!畜産業の基礎と機会

持続可能な畜産と循環型経済

畜産業はもともと飼料・家畜・堆肥の循環サイクルを形成しながら続いてきた、バランスの取れた産業です。
ですが、慣行農業が一般化し、堆肥としての役割が少なくなってしまった近年、畜産業から発生する副産物(糞尿や飼料残渣)が産業廃棄物となってしまうことで循環のバランスが崩れた状態になっていました。今後は、これらを肥料やバイオガスとして再利用することが、循環型の経済、持続可能な地域社会の形成を支えることになります。

これらの取り組みは全国でバラつきがあり、その適正化と、過度に輸入飼料に頼った生産システムからの脱却も、持続的な畜産業への課題となっています。
今後の畜産業に必要とされる目標は大きく以下の通りです。

・温室効果ガスの削減飼料の利用促進
・ICT機器や放牧(耕作放棄地含む)の普及
・子実用とうもろこし等の国産濃厚飼料生産の拡大
・アニマルウェルフェアに配慮した飼養管理の普及とその技術の開発

まとめ「私たちにできること」

畜産業における課題は多岐にわたります。これらの問題は畜産業者や国の政策だけでは十分に解決できません。消費者である私たちが積極的に関与していくことが不可欠となります。

では、私たちにできることは何でしょうか。
それは、環境に配慮した生産方法、適切な飼育環境で育てられた製品を選ぶことです。

どうしてもそのような取り組みを行うとコスト負担が増え、価格転嫁つまり製品の値段が高くなるのは必然です。消費者の選択や行動が畜産業全体に影響を与える力を持っています。
国や畜産家が取り組む政策や技術革新だけでなく、消費者一人ひとりが「自分にもできることは何か」を考え、行動することが、課題解決に向けた重要な一歩となるでしょう。

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