・残した足跡の数だけ実りが得られる
・体は食べ物でできている
・自然時間に自分を合わせていく
・聞き逃してしまう声に耳を傾ける
・人と自然との調和を教わった農林業インターン

「残した足跡の数だけ実りが得られる」

全国的にも珍しく、おむすビーズとしては初の試みとなる「農林業複合型」のインターンに参加した和田さん。3週間という短くはない期間を高知県土佐郡土佐町で過ごした。おむすビーズからも多くの人たちが移住しているこの土地で新たな研修生として過ごしたこの期間を、和田さんは「田舎ならではの、都会では得難い貴重な経験をする事が出来ました」と振り返る。

個人・法人の農家、林家(林業家)、計8件を訪ね、宿泊先では作業だけではなく暮らしぶりも体験した。「農業と林業の現状を知る事が出来て、今後の人生の幅も広がりました。地道な作業を通して、何事も成果や結果を得る為には、一歩一歩自分の足で、一つ一つ自分の手で、大切に積み上げる事が大切なのだという事を改めて教わりました」という和田さんの農林業インターンで得たものは一体どのような内容だったのだろうか?まずは、どういう経緯でインターンに参加する事になったのかという所から見ていきたいと思う。


体は食べ物でできている

和田さんが、農業に興味を持ち始めたのは5年ほど前。昼と夜と2つ仕事を掛け持ちし、忙しく日常を送っていた。独身男性の一人暮らし故、食生活は3食ほぼ外食。内ほとんどがコンビニで済ますような食事だった。そんな生活が半年ぐらい続いたある日、胃に激しい痛みが起きる。病院へ行くと、胃に穴が空く一歩手前、と診断されストレスの軽減と食生活の見直しを提言された。

そこから「何を食べ、何を食べないか」という根本的な問題から見つめ直した。「体は食べ物で出来ている」という、自然栽培を進める農家の言葉が心底心に響き、具体的な答えとして見つかったのが、オーガニック野菜だった。とは言え、大阪でオーガニック野菜を求めるにはそもそも扱っている店も少なく、値段も高い。「ならば自分で作るしかない」と思い始めた。

しかし現実は厳しく、大阪市内に住んでいては田畑はすぐには見つからない。経験もなく、土地も無い状況でオーガニック野菜を自分で作るというのはいささか無理があった。そこで、夜の仕事を辞め、オーガニック野菜を扱う飲食店に勤める事となった。一方で、市内から少し離れた郊外の知り合いの畑へ手伝いに行ったりと、自分で作物を作る事への道も模索するような日々が始まった。この頃から、半農半Xというライフスタイルの確立を目指し始めた。Xとは、農業以外の何かのビジネスという事で、兼業農家と同じような意味合いでもある。自分で食べるものを自分で作り、必要なお金はXで稼ぐ。そういった生活を送るためにどうすればいいのだろう?と模索していたが、明確な道を探す事がなかなかできない日々が続いていた。

そして、今回のインターンシップのタイミングが訪れた。3週間という期間を確保するには、仕事をどうするか、という問題が立ちはだかる。結果、仕事を辞め、高知県へ飛び込むように参加した。そこで学んだ事は、実際の作業のノウハウもそうだが、話を聞いていく中で「考え方」や「働き方」についての変化が大きくあったのだと感じた。

自然時間に自分を合わせていく


具体的な農作業の一連の流れをプロの農家に教わる。どの仕事や分野でも、まずは専門家に聞くのが近道である。そして、今回訪れた農家さんに教えられた、農業の極意となる言葉の一つが「植物や天体などの自然の時間に自分を合わせて作業をする事。夜は植物も人間も休まなければならないし、雨の日に種をまいてはいけない。夏はどんなに暑くても草刈りや畑の管理をしなければならない」自分が作物を作っているのではなく、作物が育つのを手助けしている、という基本を忘れてはいけないという意味でもあった。人間のエゴとも言える、ついつい自分があれこれ支配して思い通りにしようと考えてしまう事がある。そうではなく、させてもらって、ありがとうございます。という感謝の気持ちが大切という事だった。

そして、「残した足跡の数だけ、実りが得られる」という言葉も改めて心にしみる言葉だった。化学肥料や農薬によって、また大型の機械化によって農作業は格段に効率化された。それ以前は全て手作業で、田んぼの中を自分の足で練り歩いて様子を確かめ、苗を一つ一つ大切に植えていた。知恵や工夫によって、牛に田畑を耕してもらったり、新たな道具が生まれたりと、作業の仕方は日々進歩してきたけれども、根本的な本質はいつの時代も変わらない。本当の実りを得ようとするならば、機械を使ったとしても、自分の足で様子を見に行き、手足で確かめながら作業しなければならない。「それはどんな分野においても同じ事が言える」と言われ正にその通りだと痛感した。スマホやネットショッピングなどで何でもすぐにできる時代。だからこそ、自分の足跡が大切なのだと。

農作業のノウハウも作業を一緒にしながら一つ一つ丁寧に教わる事が出来た。その作業はただの畑作業ではなく、作物を生かし、土を生かし、虫を生かし、最後にそれを頂く自分達人間が生かされる、という調和の為の作業なのだ、という事も実感したそうだ。

聞き逃してしまう声に耳を傾ける

体調を崩した事から必然的に食べ物に興味湧き、農業の研修を主な目的に来た和田さん。たまたま参加した形の林業研修だったが、そこでは想いもよらない収穫があったようだ。「全く無知の状態で挑んだ林業の研修。そこもまた大切な教えと考え方を学べた。また、林業や山全体の危機的な現状を知れて、これからの日本全体にとって重要な問題についても意識を持つ事が出来てよかった」林業に関しては、農業ほど世間に実情が広まっていない。今後はその問題にも言及していきたいと、和田さんは語った。

林業の抱える問題とは、二世代程前に政府主導で進められた日本各地の山々での植林であった。植林は一定期間の間伐という手入れを行って、山の環境や木の育成を守っていく手はずで進められる。しかし、数十年前から、海外の木材が格安で輸入され始めた事に伴い、日本の山々で植えられた杉や檜が放置され始める。一見自然豊かな木々が生い茂る山々の風景に見える。しかし、放置され、大きくなり過ぎた木々が日光を遮り、本来山の地肌を強くする為の下草(雑草)が育たなくなってしまう。一本一本の樹木も、根や幹が不十分なまま日光を求めて背丈だけが伸びてしまい十分に育たない。このような悪循環で山の環境が悪くなってしまう。また、動物が食べるような木の実をつける樹木も育ちにくくなる為、山の動物が食べ物を求めて田畑を荒らし始めた。

訪れた個人林家にて実際にチェーンソーを使っての伐木。父親よりも年上の小柄な林家さんに、「植林した後に大事な事は育林(いくりん)する事。何事も一緒で、大事に手間暇かけて自分の手と足で育てていく事が重要になってくる」と言われ、どの分野でもやはり基本は同じなのだな、と感じたという和田さん。

山の手入れとして、成長の遅い木や逆に早過ぎる木を切り倒しながら山全体を守っていかなければならない。切る木の選定というのも重要になってくるなかで、経験豊富なその林家さんは「理論的にこの木を切って、この木は大事に育てるというのも大事。でも、長年やってると、木が勝手に教えてくれるんだよ。自分は元気だからまだ切らないで、とか、他の木の為に切ってください、という風にね」。植物の声が聞こえる、なんて言うと、ややもすると幻聴の様にも聞こえるが「満面の笑みでそう教えてくれた林家さんの笑顔から察するに、本当に聞こえているんだろうな」と和田さんは言う。農業では自然の時間に合わせるという事が大切だったが、林業では山や木の声を聞く事が大切になるのだと、目に見えないが、確かにそこにあるものを感じる事が出来たようだ。



人と自然との調和を教わった農林業インターン

「この研修は本当に参加できて良かったです。もちろん、いい部分だけではなかったですけど。虫が大量発生したり、アブに刺されたり、普段身近にある娯楽や施設が無かったり、都会には無い問題もありました。それら全てを踏まえて、スケジュールなど多少無理をして参加した価値があった」と、改めて総括する。

和田さん自身は、まだ移住するかどうかは決めかねている様子。しかし、移住や就農というものがよりリアルに人生の選択肢となったのは、語ってくれた口ぶりからも十分に伝わってきた。そこには、研修の内容の他にも、先に移住して先輩移住者の生活感も大きかったようだ。都市部から土佐町へ移住した人たちが口を揃えて、「土佐町はよそ者を毛嫌いするのではなく、暖かく迎え入れてくれる風土が素晴らしい」と言っていたらしく、その先輩たちが大きなトラブルもなく、何年も住んでいるのを見ると安心してくるのも当然かもしれない。
都会であれ、田舎であれ、人間関係はやはり大切。そして、都会に住んでいると忘れがちな自然との調和、というものを改めて気付かせてくれたのもこの研修の大きな収穫の一つ。

「昔の僕のように、仕事に忙しく、文字通り『心を亡く』している人たちにお勧めしたいです。農業や林業の作業やノウハウを実践しながら学べた事も大きかったが、もっと根本的な『生き方』や『働き方』という部分を考えさせられたのも大きかったですね。こういう事が大切なのだと気付けたのも、仕事を辞めてまで一歩を踏み出した結果が『足跡』として今後の人生の実りにつながっていくのかな、と農家さんの言葉を身近に感じるようになりました。虫や蛇には最後まで悩まされましたけど、是非それも体験しに行って欲しいですね」と満面の笑みで研修をお勧めしてくれた和田さん。その笑顔は、林家さんから受け継いだ笑みだったのかもしれない。


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