都市部と地方を行き来し、生活の拠点を2つもつ、「二地域居住」という生き方を選ぶ人が増えていることはご存知でしょうか?
「田舎暮らしはしてみたい。だけど、いきなり移住するには不安が残るしハードルが高い。」といった人達が、「平日は仕事の拠点がある都市部で生活し、週末や休日になると田舎のもう1つの拠点で過ごす」といった生活を送っています。

例えば、地方で1ヶ月アパートを借りたとしても1万円〜2万円という所もあります。また、「移住」に比べると地域との関わりも薄くなるため人間関係でのハードルも高くはありません。
地方部にとっても、週末だけでも拠点としてくれる人が来ることは街の刺激や活性化に繋がり、メリットが多いのです。

では、実際に多地域居住を実践している人はどのような生活を送っているのでしょうか?
実際に生活して感じるメリットやリスクについて2名のかたから話を聞きました。



二地域居住とは?


まず、そもそも二地域居住とはどのような暮らし方を指すのでしょうか?

二地域居住
「二地域居住」とは、都市住民が、本人や家族のニーズ等に応じて、 多様なライフスタイルを実現するための手段の一つとして、農山 漁村等の同一地域において、中長期、定期的・反復的に滞在する こと等により、当該地域社会と一定の関係を持ちつつ、都市の住 居に加えた生活拠点を持つこと。
引用:国土交通省
(http://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/chisei/kokudoseisaku_chisei_tk_000073.html)

つまり、単なるレジャーで田舎に行くのとは少し違い、「一定期間を農山漁村で暮らす」ことを言い、二つ目の生活の拠点として地方で暮らすことを二地域居住呼びます。
中には二地域に限らず、三地域、四地域と複数の生活拠点を持ちながら仕事を転々としている方も
おり、交通網やインターネット環境の整備が進んだ現在の新しい生活スタイルとして注目されてきました。

様々な暮らしかたがある

  1. 「一定期間を農山漁村で暮らす」といっても、生活に合わせた様々なライフスタイルがあります。
  2. 第二の家を田舎に持つ「セカンドハウス型」
  3. 田舎にもう1つの仕事を持つ、「二地域就労型」
  4. 週末や1年のうち、定期的・反復的に滞在する「中短期滞在型」
  5. などが代表です。

セカンドハウス型のスタイル

都市部に生活のメインとなる家を持ちつつも、田舎にもう1つに生活拠点となる家を持つ生活スタイルです。

セカンドハウスと一言で言っても、
・賃貸住居を借りる
・空き家を購入し、リノベーションして住む
・地元の人や友人とシェアをする
など、地域を訪れる頻度や用途に合わせた様々な選択肢があります。

二地域就労型のスタイル

都会と田舎それぞれに仕事を持つスタイルです。
・仕事の長期休暇を利用して田舎に行き、田舎にいる間だけ短期の仕事をする。
・観光ツアーのガイドをおこなう。
・都会の仕事で培ったキャリアを活用して仕事を自分で創る
など、個人のスキルによってできることは多岐に渡ります。

二地域就労を行うメリットは収入が2つになるので金銭面での負担が軽減されることと、仕事を通じて地域社会と関わる機会が増えるので、コミュニティに馴染みやすくなることが挙げられます。

週末や長期休暇時に定期的・反復的に滞在する「中短期滞在型」

中期滞在の目安として、1ヶ月〜3ヶ月以上の期間
短期滞在の場合、毎月3日以上、年通算1ヶ月以上の期間
を田舎で過ごす場合、「二地域居住」と定義されることが多いです。

・冬の寒い時期を暖かい地域で過ごしたり、夏の暑い時期を避暑地で過ごす「季節移住」
・平日は都市部、週末は田舎ですごす「週末居住」
など、サラリーマンや一般の人でも選択しやすいのが中短期滞在型のスタイルです。

都市生活だけでは難しい、多様なライフスタイルを創造することができます。

二地域居住のデメリット

二つの拠点を持つことになるので、デメリットやリスクも事前に把握しておかなければなりません。

主なデメリットとしては、
・居住環境の確保や整備が必要になる
・生活利便性が都市部に比べると悪い
・移動費や交通費がかかる
・都市部にいる家庭との問題
・親の介護の問題

などが挙げられます。

では、これらを考慮したうえで二地域居住を実践している人はどのようなライフスタイルを送っているのでしょうか?
二地域居住を実践する2名のかたからお話を伺いました。
リスクやデメリットとどのように向き合っているのか?
実践するための方法は?
などを紹介していきます。

二地域居住実践者に聞く実践へ向けたQ&A

川人ゆかりさん

・ローカルキャリアカフェ代表
・移住定住アドバイザー
【居住地域】
大阪市×茅ヶ崎(神奈川県)×新温泉町(兵庫県)の多拠点居住を実践

【経歴】
大学卒業後人材紹介会社で採用アドバイザーとして働いた後、1年半の海外生活を経験。帰国後は国内の雇用や移住のミスマッチを減らすべく、キャリア教育や移住定住促進の現場で地域と若者双方へのサポートを行っている。

天野治美さん

・おむすビーズ総括
・一次産業就業
・地域支援

【居住地域】
奈良県×隠岐の島町(島根県)の二地域居住
引っ越し歴15回と、都市と地方で様々な暮らしの経歴を持つ天野氏。現在は一次産業や地域に関心がある方への体験プログラムを豊中市、高知県、島根県等の地域と連携し企画運営を行なっている。

二地域居住についてのQ&A

Q 趣味の時間を増やすために二地域居住をしたいと思っています。ただ、地域との繋がりや深い交流を求めるかというと、必ずしもそうではありません。地域との折り合いはどのようにつけていますか?

川人:繋がりを求めないのはそれはそれでいいと思います。
例えば、家を持つと維持管理や町内のことなど、自分一人では解決できない地域コミュニティとの関わりがでてきます。反対に、アパートでの一人暮らしなら、深い繋がりはありません。
「地域」と一言で言っても、発展している場所と小規模な場所、コミュニティの繋がりが深い地域と浅い地域など、色々あるので、まず「田舎すぎないところ」からはじめてみてはいかがでしょう?
例え、地域との繋がりを持たなくても、1人でも交流人口が増えることはプラスに働きますし、ご友人や家族を連れてこられ、新しい消費が生まれる可能性もあります。
ですので、趣味や好きなことをきっかけに始めてみることは良いのではないでしょうか?

天野:「好きが高じて」というきっかけで地域居住を始めることは、長く続ける強い動機になると思います。好きなことがそこにあるのは凄く良いことだと思うので、思うままにやってはどうでしょう?
地域によって住人の雰囲気は違いますし、いろんな人が折り重なっています。
移住したら必ず地域活動に関わらないといけないかというと全然そんなことはありません。
気に入らなければ移動しても良いですし、選択肢を持つというスタンスが大事だと思います。

Q 二地域居住の交通費や生活費はどのくらいでしょう?

川人:私の場合、仕事で行くので交通費は基本的に会社が出してくれています。宿泊場所も茅ヶ崎は無料で借りているので家賃もかかりません。新温泉町の場合は、交通費が往復1万円弱、家は古民家のシェアハウスを現地の人と出し合っているので、月々5千円ほどです。
車でいくなら何人か乗り合っていけば安くなるので工夫次第です。
諸々含めると、月2〜3万円ほどですね。

天野:私も毎月2万円ほどです。地域でも生活するお金は必要なので、いかにお金のかからない比率を高めることができるかが大切になると思います。例えば食べ物は地域で育てたり、現地の人に安く譲ってもらったり、家賃の安いところを探したり。
交通費はかかるので、「現地で仕事を作る」ということを考えるのも良いかもしれません。
月2万円ほどだと、1日600円ほどです。1日600円コツコツ貯めることができれば問題ない範囲だと思っています。

Q 柔軟な仕事をしている人しか、実践できないのではと思います。実践している人はどのような仕事をしている人が多いのでしょうか?

川人:今の現状はWEB関係の仕事をしていたり、時間や場所に捕らわれず仕事ができる人の方が多いと思います。サラリーマンで土日しか時間が取れない方は、無理に遠くに行く必要はありません。片道1時間〜2時間でいける範囲もありますし、できる範囲のことを始めるのがいいと思います。

天野:今の仕事が二地域居住に適しているかを見極めることが大切だと思います。私は、地域に仕事をつくるのが大切と考えていて、地域の季節労働で働くなども有りだと思っています。1つのの仕事を続けるよりもリスクを分散することもできます。
仕事になることは田舎にはたくさんあるので、現地で仕事を作ることも考えてみてください。

Q 二地域居住に向いている人、向いていない人はどのような人ですか?

川人:現状を他人の責任にしている人や、環境のせいにしている人はあまり向いていないと思います。田舎にいったからといって、自分が大きく変わる訳ではありませんし、むしろ人間関係は濃くなります。
すすめる人は、やりたいことがあるけど、躊躇している人。前向きに考えているけど、最後の勇気が出ないという人は背中を押しますね。

まとめ

二地域居住での暮らし方について紹介しました。
「将来は田舎で暮らしたい!」と考える人にとって1つの選択肢となるのが二地域居住です。
交通費の問題や地方の受け入れ体制についてなど、まだまだ課題となることは多いですが、この流れがさらに進み、田舎暮らしを前向きに検討する人が増えていけば嬉しいです。

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