農業と林業の兼業は、都会暮らしの人から見れば不可能に思えますが、実はとても理にかなった取り組みと言えます。兼業することによって分散されるリスク、年間通しての収入源を確保することが可能だからです。
本記事では、農業と林業などの兼業のメリットや具体的な実例、相乗効果などについて解説します。これにより、農林業の持続可能な未来への道筋を探ります。

兼業のメリットと働き方

農業と林業の兼業は、季節ごとの活動が異なるため、年間を通じて仕事が途切れないというメリットがあります。例えば、夏には農作物の栽培・収穫を行い、冬には山林の手入れや伐採を行うことができます。

  • 農業の季節性: 春から秋にかけての暖かい季節は作物が成長する時期です。その間は植え付けや草抜き、施肥、収穫などやることがたくさんあり多忙です。しかし冬の季節は作物が育つ気候ではないため、次の季節のための土作りや種の準備など、夏に比べて作業量が少なくなります。その作業量が少ない時期を農閑期と呼び、一般的には冬の時期を指しています。
  • 林業の季節性: 林業において伐倒作業は主に冬に行われます。木にとっても夏は成長期であり、水分をたくさん吸い上げて水分量が多くなっています。そのため傷がつきやすく、カビも生えやすいため商品としての価値が下がってしまうことが理由です。夏に行う間伐は主に切り捨て間伐が多く、残す木の成長のための間伐です。反対に冬は含水率が低いため乾燥による「くるい」も生じにくく腐りにくい、いわゆる良材と呼ばれる商品は冬に伐採したものになります。

上記から、農業と林業では繁忙時期が真逆という側面があることがわかります。

収入の安定も重要なポイントです。農業は1年単位で天候や市場価格の変動に影響されやすいですが、林業との兼業によりリスク分散が可能です。林業は長期的な視点で管理されるため、収入の安定性が高くなります。

さらに、農業と林業の技術や知識の相互利用も大きなメリットです。例えば、農業の土壌管理技術を林業に応用することで、森林の健康を保つことができます。また、林業で得た知識や技術を農業に取り入れることで、より効率的な生産活動が可能になります。

実例

日本の山間部では、農業と林業を兼業する農家が多く見られます。現在のようにビニールハウスなどの設備がなく冬の農業に期待ができなかったり、そもそも山間部で農業を行う農家は刈払機やチェーンソーを扱えることがほとんどのため伝統的に農業と林業が共存していました。昔は農耕用の道具なども山から伐り出した材木で作り、冬に備えて薪や炭を備蓄したりと、山と暮らしは密接に関わっていたのです。

下記に紹介するのは、現代の兼業農家の実例です。

■自伐林業とみかん農家、樹上伐採と三足の草鞋を履く兼業農家のリアル(フォレストジャーナルより)
■農業・林業・畜産を組み合わせ、収入周期が異なる収入源で通年の収入確保に挑戦(マイナビ農業より)

昔のように木材で道具を作ることは減りましたが、昨今のキャンプブームなどにも需要がある「薪」を商品にしたり、端材で木工品を制作したりと小さな林業での兼業は時代の流れにも合っているような気がします。

農業と林業の相乗効果

水資源管理

農業と林業の相乗効果の一つに、水資源管理があります。山林の整備(間伐や植林など)は、土壌の保水力を高め、水資源の安定供給に寄与します。

  • 保水力の向上: 山林の間伐などによって山に光が入ると草花や低木が育ってきます。それらの豊かな土壌と健全な森林によって降雨が地下水として蓄えられ、流量を調節してくれます。中でも特に重要な地域で森林から河川への流量調節機能と農業用水などの確保を目的としたものは「水源かん養保安林」に指定され伐採制限など国によって適切に管理されています。
  • 防災効果: 間伐遅れなどで表土がむき出しになると大雨で流出し、土砂崩れなどの災害を誘発します。同様に倒れやすい危険木なども増えてしまいます。間伐・植林などの山林の適切な管理は、森林の表面浸食や崩壊による土砂の流出を防止します。また特に防災上必要な山林には、やはり保安林の指定がされています。「土砂流出防備保安林」「土砂崩壊防備保安林」などです

土壌改良

森林で発生した落ち葉などで作られる腐葉土や、木の樹皮や枝葉の部分(林業残渣と呼ばれる)を利用したバーク堆肥などが、農業で利用されています。

  • 有機物の供給: 落ち葉や樹皮、枝葉を堆肥化することで、有機質肥料として農地に還元できます。これにより、土壌の保水力や通気性が向上し、農作物の根が健全に成長する環境が整います。

農業と林業の副産物を相互に利用することで、資源を無駄なく活用する循環型農業が実現します。またバーク堆肥は、持続可能な森林経営の一端を担っています。

環境問題

持続可能な農林業

農業と林業の両方で、持続可能な管理は重要視されています。どちらも環境への負荷を最小限に抑え、資源を適切に保護しつつも、有益な生産活動ができるようにすることが理想です。

  • 計画的な伐採と再造林: 林業では長期的な計画での伐採と再造林が重要です。間伐などの森林整備を行い、森林の多面的な機能を最大限に活用しつつ、森林資源を循環的に利用することが持続可能な森林管理といえます。
  • 環境に優しい農業: 減化学肥料、減農薬や有機農業などで環境への負荷を低減し、生産力向上と持続性の両立を目指すための農法への転換が推進されています。特に土壌の健康維持と水源の保全は重要事項です。

間伐のできていない森林は日光が入らないことから、動物の餌になる小低木や雑草などが育たず、食物連鎖がうまく回らない状態にあります。猟をする人が減ったことも相まって個体数が増えた動物たちは、人里まで餌を求めてやってくるようになってしまうのです。健全な森林を管理することが、農家にとっては獣害被害の予防につながるとも考えられています。

気候変動への対応

農業と林業の兼業は、気候変動の影響を緩和する手段としても有効です。異なる季節や環境に適応した生産活動により、リスクを分散できます。

  • 炭素固定(※注): 森林は大気中の二酸化炭素を「光合成」により炭素固定し、代謝物として酸素を排出するという重要な役割があります。また木は木材や木製品となった後も取り込んだ炭素が固定され続け、その木材が燃やされない限りは固定されたままです。
  • リスク分散: 異常気象や自然災害による農業被害は予測不可能です。そんなときに追加的所得を確保する意味で林業を副業にすることで持続可能な経済活動が可能となり、地域の生活基盤を支えることができます。

※注)炭素固定とは?…
気体である二酸化炭素(CO2)を炭素化合物に変換すること。光合成以外にも人工的に炭素を固定する技術が世界各国で研究されている。この取り組みが進められている理由は、地球温暖化の問題によるもの。二酸化炭素を固定化することで空気中から減らすことができれば、地球温暖化が緩やかになるのではないかと考えられている。

まとめ

本記事では、農業と林業の兼業について解説しました。
農業と林業との密接な関係、兼業する上でのメリットなどもお分かりいただけたかと思います。

実際に木に触れて、農作業をすると、わかることがたくさんあります。
以前お話を聞いた際の「農家だって、使いたくて農薬を使っているわけじゃない。」という言葉が切実であり現実として、とても記憶に残っています。
「無農薬」という言葉の前に立ちはだかる、少なくない現実を学ぶことで、持続可能な農業、そして林業を考えていきませんか?

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