上土井 崇さん
居住地:土佐町
年齢:40歳
家族構成:妻、子ども2人
以前の仕事:会社員
現在の仕事:地域おこし協力隊スタッフ
子育てに最高の環境で、農業しながら暮らしたい
高知県土佐町の「地域おこし協力隊」の隊員として活躍する上土井崇さんは、奥様と子ども2人を連れて京都から約1年前に移住してきた。東京や京都でサラリーマンとして仕事をしていた上土井さんは、子どもをきれいな水と豊かな自然がある場所で育てたい、さらには自分が食べるものは自分で育てたいという想いをずっと持っていたという。
「移住する約2年前から趣味で家庭菜園を始めたんですが、徐々に本気になってきて……。いつかは移住して農家をやりたいと思うようになりました。情報収集も兼ねて大阪で移住者向けのイベントなどに顔を出すようになると、本格的に移住を考えるようになりました、知人が高知の土佐山に移住したこともあり、高知は有力な移住先候補でしたが、移住後の仕事に不安があって踏み切れなかったんです」
そんな時、移住を後押しする情報が飛び込んできた。
「大阪で開催されていた高知移住フェアに参加すると、土佐町で「地域おこし協力隊」を募集していることを知りました。地域おこし協力隊の隊員になれれば、3年間の期限付きですが仕事の不安はなくなります。「これだ!」と思いましたね」
仕事もメドが立ち、上土井さんが家族に移住の意向を伝えたとき、奥様は「え?嘘でしょう?」と思ったそうだ。
「京都でマンションを買って暮らし始めて1年ほどが経ち、ようやく京都暮らしが落ち着いてきた頃でしたし、子供が大きくなるまで京都に住むものだと思っていた矢先でした。「移住したい。農業がやりたい」という感じで事後報告ではありませんでしたが、本人の中ではほぼ決意した後という感じでしたね(笑)」
酒処・土佐ならではの「飲みニケーション」も楽しい!
お世話になっている農家の方と。
「地域おこし協力隊」の隊員として、3年間の任期で高知県土佐町に移住した上土井さん。農業をはじめとした第一次産業の応援や地域振興などに奔走する毎日だ。
「将来自分が農業する時のことも考え、協力隊の業務に取り組みながら農業を学びたい。多くの農家さんやJA職員の方々から農業を学ばせてもらい、人脈づくりをさせてもらっています」
移住して約1年が経ち、上土井さんの自身も変化してきたという。
「時間の流れ方がゆったりしているので、移住前よりも気持ちにも余裕があるように感じます。あと、高知県・土佐は酒どころ。サラリーマン時代よりも確実に飲む機会は増えました。でも、楽しい酒なので全然苦じゃない。たくさん飲める方じゃありませんでしたが、以前よりも確実にお酒には強くなりましたね」
高知には、テーブルに置かれた料理はそっちのけで、輪になって酒を酌み交わし続けることが多いとか。
「高知の文化で「返杯」というのがあって、自分の杯を相手に渡して飲んでもらい、その杯を返してもらって注いでもらって自分が飲む。要は、自分が飲みたくなったら誰かに飲ませて自分も飲む、という文化があります。誰かの家に集まって飲むのが多いこともあり、ゆっくりとたくさんの酒を飲みながら交流を深めていくのが土佐流。私はたいてい序盤で酔い潰れちゃいますが(笑)」
移住成功には、家族の理解とサポートが必須。
移住仲間である仙田さんとは、家族ぐるみのお付き合い。一緒に食事を取ることも珍しくないそうです。
地域おこし協力隊の隊員として、土佐町の活性化に取り組む上土井さん。「高知楽しい?」と聞くと、「うん!」と力強く頷く息子の亘(わたる)くんを膝に乗せながら、協力隊の任期が終われば土佐町で農地を借りて農業を始めるつもりだと話してくれた。
「農業をとりまく環境は、後継者不足、収入の少なさ、耕作放棄など、数多くの問題を抱えています。子どもや孫の世代に、安心・安全・安定した食環境を伝えるために取り組んでいきたいです」
家族の理解があったから移住できたと語る上土井さん。奥様も農作業をサポートする心構えはできているという。
「初めて聞いた時は驚きましたが、話し合う中で主人がやりたいことや意志が伝わってきて決意しました。実際に移住して感じたことは、子どもを育てるには最高の環境で、移住して良かったと思っています」
最後に、上土井さんに移住を考える人にアドバイスをお願いすると、「特に気負う必要はないと思いますよ」という言葉とともに次のように語ってくれた。
「都会にいた時と同じような気持ちで、人として当たり前のことを当たり前にすれば、絶対楽しく暮らせます。ただ、プライバシーはないと思った方が良いですね。その代わり、地元の皆さんから余りある親切心やおもてなしがいただける。人とつながることが好きな人は、田舎暮らしを存分に楽しめる素質があると思います」